最近では、サービス競争が激化し、本当の意味で顧客満足を高めなければ生き残れない時代になりました。それに気づいた企業では、建前論から脱却して真の顧客満足を実現することで、競合に大きな差を付けて、お客さまから選ばれ続ける企業に進化しようと熱心に取り組んでいます。
そこで前回から、お客さまから高い評価を得ている企業が押さえている5つの取り組みを取り上げています。前回は、CS向上の目標地点の決め方と、CSに本気になるためのシナリオについて紹介しました。今回はその2回目として、3つ目の取り組みから見ていきたいと思います。
(3)サービスプロセスをモデル化して継続的にブラッシュアップする
サービスはお客さまと一緒に作るものだという大きな特徴があります。つまり、お客さまの事前期待を掴んだり、事業としてのサービスシナリオを描いたとしても、サービスの現場でお客様の事前期待に応えるようなアクションができなければ、結局はサービスへの評価は高めることはできません。
そこで、サービスプロセスをモデル化することで、どのプロセスでどういう努力をすると価値があるのかを明らかにします。
実はサービスの現場には、経験やセンスで磨かれた知恵や工夫が溢れています。その価値ある知恵や工夫は、普段は各自の頭の中にしまわれていて、組織的に活用できていることはほとんどありません。これではまさに宝の持ち腐れです。
そこで、サービスプロセスをモデル化することで、こういった現場の知恵や工夫を、組織の力に変えることができるのです。
サービスプロセスをモデル化する取り組みを通して、優秀なスタッフが普段からどんなアンテナでお客様の事前期待を掴み、その事前期待に応えるためにどんな工夫をしているのかの暗黙知を形式知化します。暗黙知を、プロセスモデルという形に仕立てることができると、組織のサービスレベルを格段に高めることができるのです。
このようにサービスプロセスをモデル化することで、現場任せや個人任せなCS向上の取り組みから脱却し、組織一丸となった取り組みを進めていくことが極めて重要です。
*サービスプロセスのモデル化の具体的な方法については、以前の記事ワンランク上のサービスを実現するをご覧ください。
なお、このサービスプロセスモデルは、一度描いたらそれでおしまいではありません。サービスプロセスモデルを実践することで得られた価値ある気付きや課題をもって、継続的にブラッシュアップしていくことが大切です。
そうすることで、実践が進むほどにサービスプロセスモデルが効果的なものに磨き上げられ、時間と共に成果が積みあがっていくのです。
そのためにサービスプロセスモデルは、キレイな資料を作っておしまいにするのではなく、出来栄えはそこそこでも現場が見て納得感のあるものに仕立てることが極めて重要です。現場の納得感を醸成するためにも、サービスプロセスをモデル化する議論のプロセスも大切にして頂ければと思います。
(4)サービス人材を育成する
サービス人材の育成は、OJT(On the Job Training)という言葉を都合よく解釈して、「経験を積みなさい」「背中を見て学びなさい」と言って、現場任せや個人任せの教育やトレーニングしかできていないことがよくあります。
もちろん経験を積むことはとても大切ですが、経験を積むことだけに頼った成長にはとても時間がかかります。また、成長のスピードにも個人によって大きな差があります。これではサービスを組織的に高めることができません。組織的なサービス人材育成を強化する必要があるのです。
また、お客さまが評価するサービスを分解してみると、「サービスの成果に対する評価」と「サービスのプロセスに対する評価」の2つに分けることができます。
実は、その両方に高い評価をいただかなければ、高い顧客満足は実現しないことが分かっています。このサービスの評価のうちで「プロセスの評価」を高めるために欠かせないのが、サービスをお客さまと一緒に作ることのできる人材の育成です。
ミスをしないことや、失礼のないマナーを身に着けることはもちろん大切ですが、一流のサービス会社では、こういった「失点しないこと」は当たり前と言えます。そこで、これから重要なのは、「得点を増やす」方向での人材育成です。
共感性を発揮してお客さまごとの期待に応えたり、状況に応じた柔軟な対応をしたり、不安を抱いているお客さまに寄り添う親身な対応をすることで、お客さまに大満足していただく。そんなサービスを提供できる人材を育成したいものです。
例えば、先述したサービスプロセスモデルを設計したら、それを人材育成にも活用している企業が増えています。業務のやり方を覚えるだけでなく、どのプロセスでどういう努力をするとお客さまに喜んでいただけるのかを理解し、ロールプレイングを通して身に着ける。また、サービスプロセスモデルを自らが組み立てられるようになることで、サービスのマネジメント力を高めるなど。人材育成への活用方法は様々です。
いずれにしても、今まで目に見えなかったサービスを、プロセスモデルの形に見えるようにすると、個別に経験を積むよりもはるかに効果的に人材育成を加速化できるのです。
さて今回は、サービスの設計や人材育成を現場や個人に任せきりにするのではなく、組織的なサービスのレベルアップをするための取り組みを取り上げてみました。これまでに4点の取り組みに触れてきましたが、これらの取り組みの多くが共通の課題を抱えています。
それは「継続の壁」です。いくら価値ある取り組みでも、継続しながら成果を積み上げられなければ意味がありません。そこで次回は、こういった取り組みを継続するためのポイントに触れてみたいと思います。