ES(従業員満足)と連動したサービス改革が増えた昨今。CSとESを同時に高める取り組みへの関心が高まっています。また、競争意識や自己実現欲求では動機づけしにくくなった現代に、従業員のモチベーションをどうやって高めたら良いものかと悩む企業も増えています。そこで前回、フォレストコーポレーションの事例から、そのポイントをひも解きました。今回はさらに具体的に、CSとESを橋渡しするしくみを考えます。
■スキを磨くサービスプロセスを設計する
1つ目は、サービスプロセス設計の中にESポイントを組み込みます。
現場の知恵や工夫を組織の力に変えるサービスプロセスのモデル化。そのカギは、プロセスごとに「事前期待」を定義して、サービスの価値やCSを高める努力ポイントを明確にすること。加えて、「勝負プロセス」を明示することで、CSを事業成長に強力に結びつけること。そう解説してきました。
ここに、ESポイントを組み込みます。「自分のスキルを活かした仕事が顧客の役に立ったんだ」と、仕事のやりがいや意義を実感するポイントをサービスプロセス設計の中に組み込むのです。
たとえば、前回紹介したフォレストコーポレーションの「選木ツアー」「着工式と引き渡し式」が該当します。ある外食店では、新人には必ず会計後のお見送りのポジションを与えると言います。帰り際に顧客から「ありがとう」「おいしかったよ」「また来るね」と言ってもらう経験を積むことで、この仕事を好きになってもらうことから始めるのだと。
このように、仕事の中に「好き」を作るサービスプロセスを設計して運用することで、CSが高まるほどにこの仕事や会社が好きだという従業員が増え、さらにCSを高めるアクションへと繋がります。
これを、「スキを磨くサービスプロセス設計」と呼んでいます。
■スキを磨くマネジメントのしくみ
2つ目は、「皆でやってみる」を後押しする事業マネジメントのしくみです。
「論より証拠」の言葉の通り、いくらキレイなサービスモデルを設計しても、実行しなければ意味がありません。サービスはお客さまと一緒につくるものです。やってみなければ分からないコト、見えない風景、得られない感覚がたくさんあります。やってみて得た経験知や実感にこそ、宝の山なのです。著書「日本の優れたサービス」の帯にメッセージをくださった一橋大学の野中郁次郎先生の言葉をお借すると、これを「知的体育会系」と言うそうです。
自分たちで決めて、「やってみる」を踏み出せる会社と、その手前でアレコレ理由を付けて現場が諦めてしまう会社、マネジメントが現場を諦めさせてしまう会社とでは、変化や成長の速度に大きな差が付きます。
それだけでなく、「やってみる」現場は、イキイキしていることが多いものです。まさにフォレストコーポレーションはそういう会社です。誤解してはいけないのは、イキイキしているから「やってみる」ができるのではありません。「やってみる」からイキイキしているのです。
これを後押しするしくみが、フォレストコーポレーションの事例でいえば3ヶ月毎の目標制度です。
1ヶ月目。自分たちで目標を決めて、やってみる。
2ヶ月目。上手くいかなくて、皆で一緒に悩む。経営マネジメントも一緒に考える。やり方を変えてやってみる。すこしずつうまくいく。
3ヶ月目。皆で達成成果を確認し合う。皆で喜びや悔しさを共有する。
そして次なるチャレンジへ。
事業マネジメントのしくみとして、皆で決めてやってみることを後押しできれば、チームで仕事をしている実感や、自分たちが事業を作っている自覚と自信を高められます。「スキを磨く事業マネジメントのしくみ」として運用するのです。
「スキルを磨く」は、どの会社も熱心に取り組んできました。これから重要なのは「スキを磨く」を掛け合わせることです。磨いたスキルを活かして顧客に貢献し、事業成長に貢献している実感が、この仕事、この事業が好きだという思いを高めてくれます。仕事でスキを磨くサービス設計とマネジメントのしくみの運用でCSとESを橋渡しして、魅力的なサービス事業へステージアップしましょう。