サービスイノベーションはよく“まぐれ当たり”がきっかけになっています。前回は、このまぐれ当たりを「見つける力」が最初の一歩として大切だという点に触れました。ただし、見つけただけではイノベーションは実現しません。どの企業でも、そういった気付きは少なからず得られていることが多いものです。
見つけていてもイノベーションが実現しない企業には、何が足りないのでしょうか。今回はサービスイノベーションの2つ目の力を、イノベーションを諦めたくなる理由とともに取り上げたいと思います。
■イノベーションの決めの一手は「飛びつききる力」
サービスイノベーションを実現した事例からは、最後は決意をもって「飛びつききる」ことが大切だということも分かります。先述のフォレストコーポレーションでは、家を建てるお客さまは必ず、木を選んで伐る選木ツアーに連れていく徹底ぶりです。
他にも、徹底的に行動展示を極めて、いまや日本一集客力のある動物園になった旭山動物園。JR九州のななつ星は、九州から日本一ではなく、あえて「世界一のクルーズトレイン」を目指すと打ち出すことで、地域の誇りと希望を集めて応援を受けることで、鉄道サービスの新たな可能性を体現しています。
このように、サービスイノベーションは、特に経営マネジメントが中途半端なスタンスを取っていては、社員も本気になれず、組織や事業としての方向性を大きく変えることはできません。イノベーション実現の決めの一手として「飛びつききる力」も重要なのです。
■「見つけたら、飛びつききれ!」は無茶な話
サービスイノベーションのきっかけとして、まぐれ当たりを「見つける力」が1つ目。決めの一手として「飛びつききる力」が3つ目。これを単純につなぐと、「見つけたら、飛びつききれ!」ということになりますが、これは無茶な話です。
カリスマ経営者ならまだしも、私のような凡人には、まるで、高い崖を飛び上がれと言われているような気がして諦めたくなってしまいます。これが「イノベーションを起こせ!」という言葉が、掛け声で終わってしまう原因だと思います。
そこでカギを握るのが、2つ目の力というわけです。イノベーションを、“起こすもの”から“取り組むもの”に変えることが、2つ目の力の役割であり、これからのサービス経営に必要な考え方になります。
イメージでいえば、高い崖を飛び上がれと言われたら諦めたくなりますが、階段状にステップアップしていけるならやってみたい気持ちになれそうです。次回、この点について詳しく取り上げます。