サービス改革担当者・CS推進担当者の学びの場

お客さまの顔は見えていますか?

■お客さまはいったい誰なのか?

これまでのいくつかの記事で、リピートオーダーをいただくには、お客さまに大満足していただくしかない、というお話をしました。

要は、顧客満足度調査で「やや満足(4点)」と答えたお客さまを特定して、そのお客さまに「大満足(5点)」になっていただくためには何をすべきかにフォーカスして議論すればよいのです。顧客満足度の平均値を見ながら議論するよりも、はるかに効果的で具体的な取り組みが期待できるでしょう。

ところが、いざ議論してみると、極めて重要な情報がないことに気付きます。それは、「やや満足(4点)と答えたお客さまは誰か?」という情報です。しかもここでは、ただ単にお客さまの名前やプロフィールが分かっても意味がないのです。

■もしかして、顧客情報も平均してしまっている?

お客さまは実に様々です。しかし、ほとんどの企業では、様々なお客さまをすべて十把一絡げにして「顧客」の一言で済ませています。もしくは、お客さまを年齢や性別、職業や家族構成などの属性情報で定義しています。例えば「30代独身女性」や「大手製造業の経営企画部」といった具合です。

実はこのような顧客定義では、サービスの現場はピンときません。「30代独身女性にサービスで満足していただくには、どうしたら良いか?」「大手製造業の経営企画部からお仕事をいただくにはどうしたら良いか?」と言われても、現場では明日から具体的に何をしたらよいのかピンとこないのです。

では、属性情報ではないお客さまの情報とは何でしょうか。

  • 初めての利用で不安を感じているお客さまと、何度もリピートしていてサービスに慣れているお客さま。
  • 急いでいて迅速に対応してほしいお客さまと、時間に余裕があるのでじっくり相談したいお客さま。
  • できるだけ安価がいいお客さまと、納得できれば高価でもいいお客さま。

少し考えただけでも様々なお客さまがいますね。

こういったお客さま全てを「顧客」の一言でまとめて分析してしまうと、価値ある情報が埋もれてしまうのです。それが「やや満足(4点)と答えたお客さま」は、どんな事前期待を持ったお客さまなのかという情報です。

お客さまの満たされていない事前期待が掴めれば、明日から何に努力するべきなのかは明快です。この観点から、お客さまを十把一絡げにしたり、自社の代表的なお客さま像で議論や分析をするのはあまり得策とは言えないことをご理解いただけたと思います。

また、お客さまに関する情報として、名前やプロフィールだけでなく、事前期待に関する情報をつかむ工夫が必要なことも見えてきました。

やはり顧客満足の本質は「お客さまの事前期待」にあります。お客さまの事前期待をつかみ、それに応えるにはどうしたら良いのか。その努力のポイントを明確にできるような顧客満足情報管理や顧客定義をすることが重要なのです。

■「事前期待でお客さまを定義する」とはどういうことか

たとえば、保険の加入相談窓口での対応で見てみましょう。保険の加入相談にやって来るお客さまには、以下のような事前期待の違いがあります。

  • 保険の内容について、「できるだけ安心な保険に入りたい」のか、それとも「そこそこ安心な保険でよい」のか。
  • 予算感について、「納得できれば高くてもよい」のか、「できるだけ安い保険に入りたい」のか。
  • 相談の進め方について、「保険は複雑で考えるのが面倒なので、スタッフにお勧めしてほしい」のか、それとも「保険は複雑だが、だまされたくないので自分で理解して決めたい」のか。

この3つの事前期待の違いを意識して、お客さまをタイプ分けしてみると、下図のようになります。これを見ながら、相談窓口にやって来るお客さまに喜んでいただき、保険に加入してもらうにはどのように対応すべきかを考えてみましょう。

■事前期待の違いによってサービスはガラリと変わる

まず、図の右上に注目してみましょう。

保険内容については「できるだけ安心な保険がよい」、予算については「納得できれば高くてもよい」という右上の一角のタイプのお客さまは、納得できれば高い保険に入っていただける可能性があります。保険会社としては、ぜひこのタイプのお客さまから契約をいただきたいものです。

ただし、このタイプのお客さまにも、相談の進め方への事前期待には違いがあります。「自分で理解して決めたい」というお客さまには、相談窓口のスタッフができるだけ丁寧な説明と小まめなQ&Aを繰り返すことで、とことん納得していただく必要があります。

一方で、「考えるのが面倒なので、自分にふさわしい保険をお勧めしてほしい」というお客さまに対して、同じように丁寧な説明と小まめなQ&Aを始めると、「やっぱり保険って面倒くさい」と思われて帰られてしまう恐れがあります。

そこでこの「お勧めしてほしいお客さま」には、スタッフがお客さまのご要望を的確に把握したうえで、ドンピシャな提案をしなければなりません。

このように、保険の内容や予算感に対する事前期待が同じお客さまであっても、相談の進め方に対する事前期待の違いによって、相談窓口の現場でのサービスは180度変えなければならないことが分かります。

「事前期待」でお客さまを定義すると、明日から具体的にどんな努力をすべきかについて、誰でもピンとくるのです。

■「お客さまの顔」が分かれば、次の一手が見える

繰り返しになりますが、多くの企業では現在、いろいろなお客さまを十把一絡げにして「お客さま」としか定義できていなかったり、属性情報でしかお客さまを定義できていないことがほとんどです。これでは現場はピンときません。

「30代独身女性」のお客さまに喜んでもらって保険加入者を増やそうと言われても、保険の相談窓口のスタッフは「いったい何をしたらよいものか・・・」と困ってしまいます。

そこで、「事前期待」でお客さまを定義すれば、「できるだけ安心な保険がよくて、納得できれば高くてもよい。なおかつ、お勧めしてほしい。」というタイプのお客さまに喜んで契約してもらうためには、具体的にどんな努力をすべきか、誰でもピンとくるのです。

このようにお客さまの定義の仕方を変えて、お客さまの顔が具体的に見えるようにすることで、努力のポイントが今までよりはるかに明確になり、CS向上やサービス改革のために、明日から具体的に何に取り組めばよいかが一目瞭然になります。

掛け声や建前論的なCS向上から脱却して、効果的で具体的なアクションに繋がるCS向上活動を進めるために、「お客さまの事前期待」について、ぜひ議論してみてください。きっと、大切にすべきお客さまの顔がはっきりと見えてくることでしょう。

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