サービス改革担当者・CS推進担当者の学びの場

CS向上を継続できていますか?

■CS向上を続けるには

『顧客満足は、お客さまがサービスを受ける前に抱いている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる。』ここ「CS寺子屋」では、顧客満足をこのように定義しています。

CS向上のためには、お客さまの事前期待を分解して徹底的に考え、その事前期待を上回ったサービスで応えていくしかありません。しかし、現実は甘くありません。「実績評価>事前期待」を長期間にわたって続けていくことは思いのほか大変なことです。

なぜなら、高いサービスを提供すればするほど、お客さまの事前期待は膨らんでいくものだからです。サービス企業の宿命として、時間とともに高まるお客さまの事前期待以上に、自社のサービスレベルを高めていかなければならなくなります。

しかも近年では、サービスレベルが上がっても値上げを簡単に認めてもらえない時代になりました。この状況で、サービスレベルを高める努力を続けると、徐々に投資が収益を圧迫して、いつかは事業が立ち行かなくなってしまうことも考えられます。

企業にとって、お客さまの事前期待が高まり続けるのは死活問題なのです。そこで大切になってくるのが、事前期待を適切にマネジメントすることです。今回は、CS向上を続けるために重要な、この「事前期待のマネジメント」についてご紹介します。

■顧客満足度は「大満足」でなければいけない

まず、顧客満足度向上の重要な目的のひとつであるリピートオーダーの獲得を題材に事前期待をマネジメントする必要性について考えてみましょう。

下図をご覧ください。これは、顧客満足度とリピートオーダーの可能性について相関関係を調査した結果をグラフ化したものです。

 この結果からは以下のことが分かります。

  • 顧客満足度が「不満」から「やや不満」、「普通」、「やや満足」と高まっても、リピートオーダーの可能性はほとんど高まらない。
  • 「大満足」になって初めて、リピートオーダーの可能性が急激に高まる。

このシンプルな相関グラフから、実に重要な気づきが得られます。それは、「リピートオーダーを得るためには、大満足あるのみ」ということです。つまり、リピートオーダーを増やすための顧客満足向上の取り組みであるならば、「そこそこの満足を目指してはダメ」「大満足以外は価値がない」ということを肝に銘じる必要があるのです。

■顧客満足度は平均値で議論しても意味がない

最近ではCS調査に熱心に取り組んでいる企業が増えています。そこでは例えば、5段階評価(1点:不満~5点:大満足)で顧客満足度を調査した結果を見て、このような議論がされています。

ー『昨年の我が社の顧客満足度は平均値が3.2点でした。なので今年は3.7点を目標にします。顧客満足度の平均値3.7点を達成するためにはどうしたらよいでしょうか?』

もうおわかりですね。このように平均値でいくら議論しても、リピートオーダー獲得には繋がりません。なぜなら、リピートオーダーをいただくためには、大満足あるのみだからです。

■事前期待は膨らんでしまう

リピートオーダーを獲得して、お客さまとのお付き合いが長くなってくると、時には例外的なお願いに対応したり、他のお客さまにはない特別なサービスを提供したりすることがあります。特別扱いに最初はとても喜んでくれますが、いつしか「特別扱いは当たり前」と言わんばかりに、喜んでもらえなくなります。

このように、お客さまとのお付き合いが長くなって、良いサービスを提供すればするほど、お客さまの事前期待は膨らんでいきます。すると、サービスレベルを維持しているだけでは、いつしかお客さまの事前期待の方が大きくなって、「以前はよかったのに・・・」と、お客さまを失ってしまいます。

■高まりすぎた事前期待は妥当な水準に

「事前期待のマネジメント」というと、なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は日常生活の中に事例がたくさんあります。

例えば、東京ディズニーランドでは、アトラクションの待ち時間を表示することや、行列を少しずつ前進させることで、お客さまの「早く入りたい」という事前期待を上手にマネジメントしています。他にも、「注文されてからゆがきます」と前置きして注文を取る蕎麦屋や、サービスの進捗をウェブで公開して利用者のイライラを解消するサービス会社などもあります。

このように、事前期待のマネジメントには「高まりすぎた事前期待を妥当な水準に冷ます」というものが多く見受けられます。お客さまの事前期待は時とともに膨らんでしまうものなので、事前期待を本来の水準にマネジメントしなければならないのです。

■事前期待のマネジメントが成功のカギ

今回はリピートオーダーを題材にCS向上を続けることをテーマにしているので、過大な事前期待を妥当な事前期待にマネジメントすることにフォーカスしてきましたが、「事前期待のマネジメント」には、他にもいろいろな方向性があります。

「事前期待を膨らませる」方向の「事前期待のマネジメント」もあります。例えば、新たなサービスを始める際には、お客さまに新サービスへの期待を持っていただかなければ、いくら良いサービスであっても、話しすら聞いてもらえません。「過小な事前期待を妥当な事前期待に膨らませる」ことを通して、「少し話を聞いてみたい」「ちょっと使ってみたい」と思っていただく必要があるのです。

他にも、マーケットでの一人勝ちを目指して、事前期待をあえてどんどん膨らませる企業もあります。また、期待されても応えられないことに対しては、寝た子は起こさないように過小な事前期待をそっとしておくということもあります。

こうして見てみると、「事前期待のマネジメント」には様々な方向があり、大変有効な考え方だとご理解いただけたのではないかと思います。

サービスの第一歩は、お客さまの事前期待を掴むことです。そして事前期待に応えて、お客さまに繰返し満足していただくことが大切です。ただし、事前期待は時間とともに膨らんでしまいます。そこで「事前期待のマネジメント」という概念を理解し、実践することが、お客さまと長く良好な関係を築き、サービスを成功に導くカギになるのです。

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