おや、谷口さん、なんだか元気がありませんね。どうかしましたか?
松井さん、聞いてくださいよ~。
松井さんのおかげで、お客さまの事前期待を考えて対応するようにしたら、評価されるようになったのはいいんですけど、今度はむずかしいお客さまの対応が私に回されることがすごく増えちゃって、困ってるんです。
ああ!わかります。サービスのプロセスに関わることってノウハウがわかりにくいから、つい、個人任せにしてしまう組織が多いんですよね。
そうなんですよ!私一人ががんばってなんとかするのは、やっぱり間違ってますよね?みんなに、どう説明したらいいでしょうか。
では今回は、どうして個人任せではなく、組織の力に変えなければならないのか、その説明を一緒に考えてみましょう。
まず、最初にわかってもらわないといけないのは、サービスの評価の観点は2つに分解できるということです。サービスの「成果」に対する評価と「プロセス」に対する評価です。
「サービスの成果」とは、たとえばQCD(品質・コスト・納期)、「早い、安い、うまい」のようなものを指します。他社にはないメニューや機能もここに含まれます。
一方で「サービスのプロセス」は、スタッフの印象や態度など、サービス利用の過程が評価の対象となります。
顧客から高い顧客満足を得るには、サービスの「成果」と「プロセス」の両方の評価を高めなければならないのです。
しかし実態は、サービスのマネジメントの立場になると、ついサービスの「成果」の方ばかり気にしてしまう傾向があります。
たとえば、
「いかにお待たせせずに顧客の要望におこたえするか」
「いかに”早い・安い・うまい”を実現するか」
「いかに他社にはないメニューや機能を開発するか」
これらについては、日々熱心に議論して、組織的に取り組まれている企業が多いものです。
一方で、サービスのプロセスの評価を高めるための努力は、ほとんどが現場任せや個人任せになってしまっており、組織的に取り組めていません。これは実にもったいないことだと言えます。
実は近年、サービスの成果では他社と差が付かない業界が増えています。サービスのメニューや機能、スピードやコストパフォーマンスで比べても、どこも同じような内容が並んでしまいます。こうなると、じり貧の価格競争に引きずり込まれてしまいます。サービスの成果をいくら高めても、他社との差が付きにくく、差別化できないのです。
裏を返せば、サービス競争は、サービスの成果ではなく、プロセスの評価を高める競争にシフトしているということです。
この大事なサービスのプロセスの評価を高める努力が個人任せになっているのはあまりに「もったいない」ことです。サービスのプロセスの評価を高めるための努力を、いかに組織的に取り組めるかが、勝負の土俵になっているのです。
谷口さんが評価されているのは、まさにこの「プロセスの評価」ですよね。ここをもっと組織的に上げていかないと、競争に勝てないという話なんです。
これは、まず、部長や課長にわかってもらわないといけないですね。
それから、みんなでプロセスの評価を上げることを考えるという手順ですかね~。
そうですね。マネジメントがきちんと理解していてくれるかどうかは、続けていく上でとても大切です。
大丈夫、谷口さんならうまく周囲を巻き込んでいけますよ!