サービス改革担当者・CS推進担当者の学びの場

CSいまさら問題と、これからのCS

「もうCSはできているでしょ。なぜいまさらCSなの。CSはもう古い。」
こんな声が最近よく聞こえてきます。

■CSいまさら問題

これに私は半分賛成、半分反対です。日本企業の多くは、長年CSに取り組んでいますから、従来のCSからはもう卒業して、次のレベルのCSにステージアップする時期にきている。そう捉えるべきだと思っています。

CSには種類があります。「CSなら何でも良いから向上させよう」では上手くいかないのは当然です。自分達の現状のCSで十分なのか、次のレベルのCSとはどんなものなのか。自社のCSの現在地と、これからのCSへのステージアップを考える時期にある企業は多いと思います。

■「心がけのCS」からは卒業

「CSは大事だと思いますか」「普段からCSを意識していますか」と聞かれれば、誰でも答えはYESです。会社の中にもスローガンが掲げられ、「すべてのお客さまに喜んで頂こう」「感動」「幸せ」「期待を超えろ」「気付きが大事」「目指せCSナンバーワン」とキレイな言葉が並びます。

つまり会社も従業員も、CSは十分に心掛けているのです。この「心がけのCS」から卒業して、ステージを上げたい企業はたくさんあります。そんな時こそ、まずはCSの本質と、CSの種類について、理解しておきたいものです。

■事業の土台から成長ドライバーに引き上げる

CSを事業の土台として捉えている企業は少なくありません。間違っていませんが、この位置づけを変えることも大切です。事業の土台としてのCSは、傾向として「失点撲滅型CS」や「義務としてのCS」であることが多いです。失点しないことは大切ですが、それだけで顧客がその事業を積極的に選ぶ理由にはなりません。失点撲滅型CSは、事業成果に繋がりにくいのです。現場も、「忙しくなるだけで成果が出ない」と疲弊してしまいます。


CSは事業成長や競争力強化のドライバーとして取り組むことが大切です。そのために、事業成果に強力につながるCSの種類を理解しなければなりません。成果に繋がるCSは失点をなくすのではなく、いかに得点が増やせるかという「得点型CS」です。

得点なら何でも良いわけではありません。満足度の「やや満足」の実に97%の顧客がリピートや紹介にはつながらないという調査結果があります。つまり成果に繋がるのは「大満足」のみ。しかも大満足の理由にも2つ種類があります。頭で考えた理由の大満足は、「やや満足」以上に成果に繋がらないことも判明しました。つまり、心で感じて大満足だけが、成果に繋がるのです。得点型CSの中でも、「心の大満足のCS」が、事業成長や競争力強化のドライバーになる。この分岐点を心得なければならないのです。

■自分達らしいCSでなければ意味がない

成果に繋がるCSなら何でも良いのかというと、そうではありません。やはりこだわるべきは、自分達らしいCS。すべての顧客に応えようとして闇雲になる「八方美人CS」や、他社事例ばかりを取り入れて“らしさ”が薄れてしまう「モノマネCS」では、顧客満足度が向上しても、事業の成長力や競争力は高まるどころか、低下してしまうことすらあります。

そこで大切なのが、自分達の事業において、どんなCSには価値があり、どんなCSではダメなのかをハッキリさせることです。たとえば、価格競争から抜け出す事業方針があるのに、値下げやキャンペーンでCSを高めても意味がありません。だからこそ、CS寺子屋でもしつこく取り上げてきた「事前期待の的」を見定めるのです。

どんな事前期待に応えるCSにしたいのか。これをとことん議論して、自分達のCSの土俵を定義することから、CSのステージアップは始まります。

■CSはどこまでやればいいのか

「期待を超えろ」「感動サービスを目指そう」これは間違っていませんが、2つ分からないことがあります。何をやったら良いか分からない。どこまでやったら良いか分からない。まさに「心がけCS」です。

そこで、先ほどの「事前期待の的」を定義すると、何をどこまでやったら良いか、逆に何はやらなくて良いかも明確になります。

「心がけのCS」では、なんでもかんでも打ち手が増えてしまいがちですが、事前期待の的を定義すれば、やらなくて良いこともハッキリするので、業務負荷も軽減するのです。このように、事前期待の的を定義することで、経営から現場までがベクトルを揃えて、納得感をもって、前向きかつ具体的で、自分達らしいCSに取り組めるのです。

さて、皆さんにとって実現したいCSとは、どんな事前期待に応えるCSでしょうか。前向きにやる気の出るCSとは、どんなCSでしょうか。どんな土俵の上で、CSを高めていきたいですか。CSには種類があります。自分達がこだわりたいのは、どんな種類のCSなのか是非、議論してみてください。

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