サービス改革担当者・CS推進担当者の学びの場

松井拓己さんインタビュー 第3回「小さな成功体験を積み上げる」

 全4回にわたって、CS寺子屋の師匠松井拓己さんに、新著「日本の優れたサービス2 6つの壁を乗り越える変革力」についてお話をうかがっています。 (第1回第2回

 多くの企業のサービス改革に立ち会ってきた松井さんならではの、キレイごとばかりではない「改革の現場」を熱く語っていただきました。改革のヒントが満載です。ぜひ、著書と合わせてお読みください。

―ところで師匠、サービス改革を進めるうえで、現場のやる気を引き出すよい方法があるとうれしいんですが。

改革で大切なのはちゃんと実践して、その経験知を活かすことですね。「実験」の結果、失敗したとしても、その経験知はサービス設計のブラッシュアップに活かせるはずです。これができないと、どうしても続かなくなります。

いまどきの企業は、「失敗したらダメ」な風土のところが、多いように思いますが、失敗を活かすことが実はとても大事です。

完璧につくりこんで、お客さまにさあどうぞと差し出すことを考えがちですが、それよりも、少しずつ変えたものを提供して、都度お客さまからフィードバックをもらって、また変えるという取り組みでも、十分ファンは増やせます。

結局、現場が前向きになって自主的に改革を進めていくためには、実践を通して、顧客接点で成果や変化の実感を積み上げることが早いのです。

-実感ですか、なるほどなあ。

それと、会社からの評価や期待も大切です。そもそも、サービス改革やCS向上が人事評価の指標になっていないことも多いんじゃないでしょうか。それでは、現場は取り組みませんよね。

-現場レベルに落とすには、現場をきちんと評価するということですね。それは、具体的にいうと、どういったものが考えられますか。

上から降ろされる指標がずれていると、どうしてもうまくいきません。むしろ逆に働くことさえあります。

組織全体の「当たり前」のレベルを高めるには、よくある「売上」や「利益」のような、結果に近い指標ではなくて、そこに至る前の段階の、あまり数字に繋がらないような指標がいいと思います。

たとえば、日本サービス大賞の受賞企業でもある陣屋では、サービスの方針を、「2回目のお客さまがまた来たくなるサービス」すなわち「3回目以降のリピート」を重視しています。

他にも、年1回しか利用しないけど、必ず来てくれる。ヘビーリピートはしなくても、友人知人に宣伝してくれる。そういう「応援者」を増やすことが大切です。

このような「応援してくれる関係性を築く」サービスができたかどうかを、適切に評価する指標を作ることは、改革にとって本当に大切だと思います。

-それは、実際につくろうと思うと、なかなか難しいですね。

期待の「的」に向かって成長していく、プロセスの途中を指標にするわけですからね。定量的な指標だけでなく、定性的な評価でもいいと思いますよ。

いずれにせよ、従業員は評価される方向に動くので、矛盾したり、無理のある目標設定はダメなんです。結局は、お客さまの事前期待に応えることが事業成果だし、それが業績につながるような顧客満足度が指標にならないと、なかなか評価しづらいとは思います。

-現場のモチベーションをあげるには、指標以外に何がありますか。

さっきもお話しましたが、成功体験でしょうね。現場を巻き込むには、とにかくスモールサクセスの積み上げが必要です。

それから、きちんと言語化することです。現場の実例を集めて言語化して、そこで見えてきた理論をどう実現するかを考える。一部のセンスのある「できる人」がやっていることを、ロジカルにとらえなおすと、自分たちの存在意義につながることがよくあります。

自分たちの存在意義を再定義して、それに基づいて、実験して、成果がでれば、それを「いい」と思うメンバーが必ず出てきます。

自分たちの存在意義と、お客さまの事前期待が合致すると、それが成功体験になって、モチベーションがあがります。

-なるほど。成功体験はやっぱり重要なんですね。

とはいえ、さらに改革を進めるには、いくらか強制力を持った徹底も必要になります。改革は忙しさとの闘いだと先ほど言いましたが、それはすなわち「妥協」との闘いでもあるんです。

忙しいし、もうこれくらいでいいや、と人はすぐ思ってしまいます。でも、妥協ラインを自分たちで押し上げていけるように取り組まないと、改革は思うようには進みません。成功体験を得た熱意のあるメンバーを集めて、「妥協ライン」の底上げをするような工夫も必要だと思います。

それと、経営と現場を橋渡しするものもいります。経営として考えたターゲット顧客の事前期待に、現場がどう応えるか問うと、答えが「マナー」や「笑顔」になったりするので、なかなか結び付きにくい。

経営と現場の感覚があまりにも乖離しすぎていると、下手すると敵みたいになってしまいます。たとえば、事前期待への応え方を、現場のメンバーが自分たちの言葉で改めて言語化するようにすると、それが経営との橋渡しになったりします。

松井拓己さんインタビュー第4回「「あきらめない」ための土台を作る」へ、つづきます。)

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