サービス事業の構成要素を、顧客、従業員、事業の3つに分けて捉えてみると、どこかが犠牲になっているようなサービス事業では、やはり上手くいきません。
これは、言われてみれば当たり前のようですが、サービス事業の実態は、どこかが犠牲になっていることがよくあります。
図には、サービス事業の3つの構成要素の周りに、サービス改革を取り組む企業でよく登場するキーワードを並べています。これらのキーワードは、やろうとしていることは間違っていません。しかし、いざ取り組んでみると、どこかが犠牲になってしまって、うまくいっていないことが多いのです。
■押し売りの営業強化ではいけない
例えば、収益向上や顧客拡大、営業強化に熱心な企業の取り組みの実態を見てみると、顧客を犠牲にしていることがよくあります。業績目標の達成だけが重要視されて、「いかに売りつけるか」という観点で従業員が奮闘しているようなケースです。
サービス改革において、事業成長に繋がる成果を実現することは欠かせません。しかし、その取り組みが提供者都合の押しつけで顧客を犠牲にしてしまうようでは、顧客からの評価は低下し、従業員は疲弊してしまいます。いずれは顧客も従業員も、離れていってしまう恐れがあるのです。
■自己犠牲のCS向上ではいけない
続いては、CS寺子屋のテーマでもあるCS向上や、サービス向上です。加えて近年では「おもてなし」が注目されてきました。顧客に価値あるサービスを届けることで、顧客からの評価を高めていくことは、サービス事業の成長エンジンになります。
しかしこれらのテーマはこれまで、建前論や精神論で語られることが多く、間違った拡大解釈をしてしまっていることが多いテーマでもあります。CS向上やサービス向上、おもてなしというものは、サービス提供側が自己犠牲を払ってでも、顧客のためにいろいろと尽くすことが良しとされる風潮があるのです。
たとえば、顧客の無茶な要望にまでも何でもかんでも応えようと努力したり、闇雲な値引きや無料化など。こういったサービスに、顧客は喜んでくれる可能性はありますが、そのためにサービス提供側である事業や従業員が自己犠牲を払って疲弊してしまうのは、サービス事業として健全な姿ではありません。
■働きがいを犠牲にする働き方改革ではいけない
さらに最近では、人材不足や労働環境の悪化に注目が集まり、働き方改革や生産性向上、ES向上に熱心な企業が増えています。サービス事業は忙しさとの戦いでもあるため、現場で働く従業員が疲弊してしまっていることが多々あります。これをどうにか解消しようと取り組んでいるのです。
しかし、自分達のサービスの価値は何なのかを意識せずに、安易に顧客接点を省力化や自動化してみたり、一方的にサービスの一部をやめてみたりすると、大切な顧客からの評価の低下を招きます。
また、働き方やES向上においては、「働き方」と「働きがい」を分けて捉える必要もあります。働き方を改善しようと残業規制をかけた結果、働きがいを犠牲にしてしまって苦戦しているというケースも少なくありません。
■自己犠牲のサービスから抜け出す
このように、サービス事業の実態として、どこかが犠牲になることで苦戦している企業が多いのです。
サービス事業の改革では、誰かが犠牲になってしまうのではなく、顧客、従業員、事業の三者が価値を実感できる取り組みが求められています。
CS寺子屋のテーマであるCS向上についても、顧客が価値を感じることと、従業員が働き甲斐を感じることと、事業成長に繋がるような成果がちゃんと出ること、この3つをすべて実現できる取り組みにステージアップすべきだと思います。