サービス改革担当者・CS推進担当者の学びの場

CSはどこまでやったらいいのか問題

Q.「期待を超えろ!」では、ダメなんですか?

……おや?谷口さん。なんだか悩んでいるようですね。どうかしましたか?

あ、松井さん。今月の職場のスローガンを「お客さまの期待を超えろ!」にしようと提案したら、『コールセンターで注文受けてるだけなのに、何言ってるんですか?』みたいな感じになっちゃって。

なるほど。谷口さんのところは、ずいぶんCS向上の取り組みが浸透してきているし、これ以上どうすればいいのかわからなくなってるんでしょうね。

いったい、どうすればいいんですか~?これでもいろいろ勉強して、考えて言ってるつもりなのに。

ではなぜ「期待を超えろ」では現場に意図が伝わらないのか、一緒に考えてみましょう。

 いつもお話していることですが、顧客満足の定義は次の通りです。

『顧客満足は、お客様がサービスを受ける前に抱いている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる。』

 事前期待よりも実績評価の方が小さいと、ガッカリされてお客様を失ってしまいます。事前期待と実績評価がほぼイコールだと、印象が薄いので競合他社にお客様を奪われてしまう可能性があります。

 この定義から出てきたCS向上の考え方が「期待を超えろ!」です。このメッセージは間違ってはいません。しかし、これでは取り組みが進められなくなることが少なくありません。何故かというと、「期待を超えろ」では分からないことが2つあるからです。

 まず1つは、「期待を超えるために何をやったら良いのか?」が分かりません。2つ目は、「期待を超える努力をどこまでやったら良いのか?」が分からないのです。これでは、闇雲で果てしないCS活動に、現場が息切れしてしまったり、掴みどころがなくて取り組みが続けられなくなってしまったりします。

 CS向上の取り組みが迷走し始めたら、この考え方を切り替えることをお勧めします。「期待を超えろ!」から、「価値ある期待に応えよう!」にスイッチするのです。これは、これまで事前期待の「サイズ」に注目していたところを、事前期待の「内容」に切り替えることを意味します。

 具体的にどういった内容の事前期待に応えたら、CSが向上するのか。事前期待の的を見定めるのです。価値ある事前期待の的を見定めることができれば、闇雲に「期待を超えろ」とはならなくなります。的に見定めた事前期待に応えるだけで、十分価値があるのです。また、事前期待の的が明確になることで、何をしたら価値があるのかが明確になります。努力のポイントが明確になれば、組織でそれに集中的に取り組むことで、個人芸頼みのCS向上から抜け出すことができます。

 CS向上には長年取り組んできて職場のマインドは高まったものの、個人芸に頼った取り組みばかりで、組織的に積み上げていく取り組みができずに苦悩しているケースが少なくありません。CSのステージアップのためには、キーメッセージをスイッチする必要があるのです。

なるほど~。CS向上の取り組みは、期待を超えるというより、どの期待に応えるかをはっきりさせることが大切なんですね。

そうなんです。現場が途中で息切れしないように、どの期待にどう応えるか、努力のポイントを明確にしてあげましょう。

今回のポイント

   「期待を超えろ!」から「価値ある期待に応えよう!」にスイッチ

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