サービス改革担当者・CS推進担当者の学びの場

差別化や付加価値向上のポイントを見つけよう

サービスがあらゆる産業で競争優位そのものと言える時代になりました。しかし「サービス」は目に見えなくて、なんだか雲を掴むよう。サービスで競争優位を築こうと思っても、一体何から手を付けたら良いのか分からない。そんな悩みを持つ企業が増えています。

そこでサービスサイエンスでは、目に見えない「サービス」を分類し、分解し、モデル化することで、その本質や努力のポイントを明らかにしています。

たとえば「コンシェルジュサービスの3つのポイント」では、サービスを2つの切り口で「分類」して、サービスのタイプに応じた努力のポイントを明らかにしました。そこで今回は、サービスの全体像を掴むために、世の中のサービスをサービスメニューの観点で「分類」してみた結果をご紹介したいと思います。

■世の中にあるサービスを分類して全体像を整理する

世の中にあるサービスを整理してサービスの全体像を明らかにする検討を行いました。経済産業省関連のホームページにある日本のサービス業をまとめた資料を元に、約450種類のサービスを分類する検討を行った結果、仮説として、世の中にあるサービスは21種類の基本サービスメニューに分類できることがわかりました。

サービス業をサービスメニューで分類する

例えば、フレンチレストランや日本料理店、カフェといったサービスは全て「2.食事や飲み物を提供する」という基本サービスメニューに分類されます。また、テーマパークやイベント業は「18.娯楽を提供する」。鉄道やバスやタクシー会社は「14.移動を支援する」。といった具合で、21種類の基本サービスメニューに分類されました。

そして興味深いことに、製造業や農業も「作ったモノを提供する」サービスメニューに分類することができるのです。このように当てはめてみると、ほぼ全ての産業を、サービスメニュー分類で表現することができそうだと分かりました。

「すべての産業はサービス業である」と捉え直してみると、昨今のサービス競争やCS競争が激化していることは納得できます。すべての産業において、サービスは競争優位そのものになってきているのです。

このようにサービスの全体像を少しロジカルに整理してみると、案外シンプルに分類することができました。そこで、このサービスメニュー分類を活用して、サービスやCS向上のヒントを探ってみたいと思います。

■サービスメニューの21分類を活用して、差別化を考える

例えばホテル業界のサービスの違いを、このサービスメニュー分類で表現してみると次のようになります。

  • カプセルホテルは、メニュー分類の中の「5.宿泊や作業場所を提供する」というサービスメニューで成り立っています。
  • 対してビジネスホテルは、「5.宿泊や作業場所を提供する」に加えて、「2.食事や飲み物を提供する」や、インターネットの繋がるPCが置いてあり「6.価値ある情報を提供する」というサービスメニューも提供されています。
  • 更にランクが上がってシティホテルになると、ビジネスホテルのサービスメニューに加えて、プールが付いていて「18.娯楽を提供する」、医師が常駐していて「11.安心を提供する」、コンシェルジュがいて「17.要求を手配する」といったサービスメニューが上乗せされています。

このように、サービスメニューの21分類を組み合わせることで、自社と他社のサービスメニューの違いを明らかにすることができます。例えば、他社にはないサービスメニュー分類を付加したり、他社と同じサービスメニュー分類であってもその中身を工夫することで、差別化のチャンスが見出せるかもしれません。

また、他社や他業界の成功事例をサービスメニューの観点で分析してみると、自社で取り込めるヒントが見つかるかもしれません。

■サービスメニューの3大分類を重ねてみる

さらにこれら21種類を分類していくと、大きく3つの基本サービスメニューに分類されます。それは、「モノ提供サービス」、「情報提供サービス」、「快適提供サービス」の3つです。これらを重ねてみると、図のようになります。

3つのサービスメニューを重ねる

この図に、分かりやすいように「農業」を当てはめて考えてみましょう。

一般的な農家は作った野菜を農協に納めて収入を得ています。これは、野菜というモノを提供するサービスという見方ができるので、サービスメニュー3大分類の中の、「モノ提供サービス」といえます。

都会近郊の農家では、秋になると旅行会社とタイアップして芋掘りツアーを企画します。これは、芋という「モノ提供サービス」の要素に、芋堀りの楽しさという「快適提供サービス」の要素が加わったサービスだといえます。

続いて最近流行りの、季節の野菜便。無農薬有機野菜が季節ごとに産地直送で自宅に送られてくるサービスです。これは、野菜という「モノ提供サービス」の要素に、無農薬からくる安心・安全や、有機野菜のおいしさ、今回届く野菜を楽しみに待つワクワク感といった「快適提供サービス」の要素が加わっています。

さらに、最近では届いた段ボールを開けると、農家の方の顔写真付きのお手紙や、珍しい野菜を美味しく食べるためのレシピなどが入っています。つまり「情報提供サービス」の要素も上手に取り組んでいるといえます。このように、季節の野菜便は「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の3つの要素をバランスよく取り入れたサービスです。

その結果、あるデータでは、純粋な「モノ提供サービス」をしている農家の場合と、季節の野菜便に取り組んでいる農家とで、大根1本当たりの農家の収入が約10倍違うと言われています。つまり、「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の3つの要素をバランスよく取り組むことで、付加価値を高めることができるのです。

■他の産業でも、3つのバランスが大事

今回の例は農業でしたが、他にも3つのサービス要素をバランスよく取り入れている産業(携帯電話・ゲーム機・自動車など)は、どれも今元気の良い産業ばかりです。

例えば、小売サービスでは、店舗に製品を並べるだけでなく、製品を実際に使って楽しめるプレイルームやカフェスペースなどを提供することで、購入前に製品の魅力を実感できる工夫をしているケースがあります。これは、「モノ提供サービス」に「快適提供サービス(楽しさ提供)」を加えたサービス強化と見ることができます。

また、製品を販売するのではなくレンタル化する取り組みは、「モノ提供サービス」よりも「快適提供サービス」の方に価値をシフトするサービス強化と捉えることができます。もちろんこのとき、レンタル製品を活用した付加価値情報の発信など「情報提供サービス」が極めて重要になります。

このように、様々な産業において、たった3つの視点でサービスビジネスを見つめ直すだけでも、十分に価値ある気づきが得られます。

サービスメニューの21分類を組み合わせることで、自社と他社のサービスメニューの違いを明らかにし、他社にはないサービスメニュー分類を付加したり、他社と同じサービスメニュー分類であってもその中身を工夫することで、差別化のチャンスを見い出せます。

そして、サービスメニューの3大分類「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」を自社に照らし合わせてみて、バランスの悪い部分が見つかれば、そこに付加価値向上のチャンスが見つかるかもしれません。

目に見えない「サービス」を分類し、分解し、モデル化することで、その本質や努力のポイントを明らかにすることができます。「サービス」を少しロジカルに考えることで、差別化や付加価値向上のポイントを見つけましょう。

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